研究概要 |
(1)ベンゼン環に7員環を二つ縮環した新規ピンサー型配位子を用いてパラジウムおよびイリジウム錯体を合成・単離した。パラジウム錯体においては配位子上の置換基を様々に変化させた誘導体を合成し、アリルトリブチルスズを用いたアルデヒドのアリル化における触媒活性について検討したところ、配位子がリン、セレンの場合に高い活性を示し、立体障害を大きくし過ぎると活性が低下することがわかった。イリジウム錯体においては、シクロオクタンの脱水素化反応を触媒することが分かり、反応温度が200℃のときにターンオーバー数が約1000の活性度を示した。また、この錯体はこれまで知られているイリジウム錯体よりも低温(150℃)でも活性を示すことがわかった。 (2)5配位超原子価化合物の速い異性化反応を凍結することを目的として、1,1-ビス(トリフルオロメチル)-2,2-ジフェニルエタノール骨格を有する新規三座配位子を開発し、単座配位子として二つの異なるアリール基を有する様々な5配位アンチモン化合物の合成に成功した。この化合物の異性化反応に対してトルエン-d_8中で速度論測定を行ったところ、活性化自由エネルギーが21kcal/molとなり、1,1-ジフェニル-2,2,2-トリフルオロエタノール骨格を持つ三座配位子を用いた場合の活性化自由エネルギー(28kcal/mol)と比較して、異性化速度の大幅な増加が見られた。これは前者の三座配位子骨格の強固さが後者よりも若干緩和されているためであると考えられる。
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