研究概要 |
ブラジル原産の伝承薬T.avellanedaeより誘導したカルスを様々な条件下で培養することにより5-hydroxy-2-(1-hydroxyethyl)-naphtho[2,3-b]-furan-4,9-dione(NQ801)を効率的に生産する方法の開発を行った。T.avellanedaeのcDNAライブラリーよりPCR法で得た数種のIII型ポリケチド合成酵素の部分配列の解析を行った。T.avellanedaeの詳細な生物活性の評価のために、エタノール抽出物を各種クロマトグラフィーにかけて得られた分画について、LCMS-IT-TOFにより分析を行い、NQ801の類縁化合物を多く含むフラクションを明らかにした。このフラクションを分取HPLCにより精製し、各種スペクトル解析によりNQ801類縁化合物群の構造の解明を試みた。生物活性評価に関しては、天然由来あるいは合成した化合物を用い、各種がん細胞に対する毒性試験、がん初期抗原発現抑制試験、マウスを用いた抗腫瘍活性試験を行った。さらにこれらの医薬資源のヒトカルシノーマに対する前臨床試験もおこなった。 その結果、T.avellanedae抽出物とNQ801が乳がん細胞MCF-7に対して、濃度依存的に増殖抑制効果を示すことを見出した。細胞毒性に関しては、抽出物では微弱な活性であったが、そこに含有する主たる活性成分であるNQ801については強い活性がみられた。また、小規模な臨床試験においてもT.avellanedae抽出物がヒトカルシノーマに対して治療効果を示すことが明らかとなった。 T.avellanedae由来成分の効率的生産法の開発と、その生物活性の解明により、本植物の医薬素材としての応用が期待される。
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