研究概要 |
本研究は、「ランタノイド錯体複核化による高次ff発光機構の発現」に基づき、同核・異核二核Ln(III)錯体の合成・単離、同種ランタノイドイオンへの同時エネルギー移動によるさらなる強ff発光性、異なるランタノイドイオンへの同時や逐次または選択的エネルギー移動によるff発光の多様化を志向している。前年度においては、H_3L(Tris[4-(2-hydroxy-3-methoxyphenyl)-3-aza-3-butenyl]amine)を用いた単核や同核二核Eu(III),Tb(III)錯体の結晶構造を明らかにし、それらの錯体のff発光機構を解明した。本平成20年度は、異核二核ランタノイド錯体の合成と高次ff発光機構の発現と題し、これまでに得られた二核や単核錯体における研究知見を基盤としつつ、異核二核Tb(III)/Eu(III)錯体の合成、X線結晶構造解析、各種電子スペクトルや速度論的解釈、さらには、電気化学的測定を行うことで、異核二核ランタノイド錯体の高次ff発光機構の発現の可能性を探求した。異核二核Tb(III)/Eu(III)錯体であるLTbEuは、X線結晶構造解析の結果、Tb周りの配位環境は、8配位の歪んだdodekahedral構造、Eu周りの配位環境は、10配位の歪んだcis-bicapped cube構造を有していることが判明した。また、LTbEuの発光測定を行った結果、Tb(III)とEu(III)に由来するff発光が両方とも観測され、LTbEuにおけるTb(III)のff発光寿命は、同核二核Tb(III)錯体(LTb_2)のものよりも約4倍短いことから、Tb(III)からEu(III)への金属間エネルギー移動の可能性を示す結果を得た。さらに、電気化学的測定も行い、Eu(III/II)の酸化還元電位や可逆性は、配位サイトや隣り合うランタノイドイオンの価数に大きく依存することが明らかとなった。
|