申請者は本研究課題においてペプチドの二次構造上に金属原子が配列した種々の分子ワイヤーを作成し、メタル化ペプチドの構造や電気特性および金属原子の磁気・電気特性を利用した新しいタイプの分子エレクトロニクスデバイスの創製を目的として研究を行った。 前年度の研究において、側鎖にベンズアルジミン白金錯体が共有結合したアミノ酸を自己組織化させることで、超分子組織体がコンデンサ一様の蓄電特性を示すことを明らかにした。そこで、今年度は錯体部分の電荷移動特性を向上させる目的で炭素、窒素、硫黄原子から成る3座配位子を新たに設計した。白金およびパラジウム錯体の合成および発光特性についてICOMC2008にてポスター発表を行った。 また、自己組織化を行うペプチド分子として新たに核酸塩基部位を組み込んだ人工ペプチドの開発を行った。天然のペプチド骨格を用いた場合、α-ヘリックスやβ-シートなどの二次構造を誘起することが可能だが、分子回路を目指した超分子集合体を設計するためには、より複雑な2次元および3次元構造の構築が必要不可欠である。そこで、本研究では核酸塩基の相補的認識機能をペプチドに組み込むことで2種類の異なる分子間相互作用を利用した自己組織化系の開拓を目的として研究を行った。その結果、基本骨格となる最小単位のペプチドが設計通りにβ-ヘアピン構造を形成することが明らかとなった。本研究成果は第57回高分子学会年次大会および日本化学会第89春季大会で口頭発表を行った。
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