研究概要 |
近年の無線通信ではMIMOやOFDM方式に代表されるディジタル無線通信技術の発展に伴い,送受可能なデータ伝送容量が飛躍的に向上している.今後のべースバンド処理回路はさらに大容量のデータを処理し,より高い誤り訂正性能を持つ符号・復号器を導入するなど今後も高い演算処理性能が要求されていくが,高性能・大規模化に伴うリスクは消費電力の増加であり,処理性能に比例して増加する.本研究課題では通信環境が良好と劣悪な場合で求められるビット誤り訂正能力が異なることに着目し,動作環境に応じて回路の演算語長を適応的に制御することで誤り訂正回路の消費エネルギー量を削減する方法を検討し回路設計に取り組み,本年度はべースバンド処理回路のビット誤り訂正に用いられるViterbi復号器の消費電力化を行った.最初にViterbi復号器で消費する電力値を正確に分析するため,Viterbi復号器及びOFDM方式べースバンド回路の設計を行った.OFDM方式べースバンド処理回路では現在の無線通信環境をセンシングする機能を導入し,全体の消費電力評価を行った.回路実装したViterbi復号器は500MHzの動作周波数で基数2アーキテクチャの場合で83mW,基数4アーキテクチャで146mW程度のピーク電力値を持つ.続いて通信環境に適応できる可変語長Viterbi復号器を設計し,そのチップ試作を行った.通信環境最良の条件で入力データ幅を1ビットにまで削減することで最大40%程度の電力削減が可能となった.
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