本研究では、有機塩素化合物による汚染地下水の低コストの浄化システムを構築するために、廃棄物中に含まれる有機酸と鉄イオンの光反応を利用した有機塩素化合物分解法の検討を行った。前年度の研究により、有機酸として酒石酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸を用いることで、トリクロロエチレンを他の有機酸より比較的早く分解できることが分かっている。 平成20年度の研究では、その反応条件、分解メカニズムの検討を行った。その結果、酒石酸では、Fe(III) (C_4H_4O_6)+の形態・リンゴ酸ではFe(III) (C_4H_4O_5)+の形態、酢酸ではFe(III) (CH_3COO)_2^+とFe(III) (OH)^<2+>の形態で鉄イオンが存在することによって、これらの錯体が光を吸収することで光反応が進行し、トリクロロエチレンを分解していることが分かった。また、この分解によってトリクロロエチレン中の塩素は、ほぼ全てが溶液中に塩化物イオンとして存在しており、トリクロロエチレンの分解後に他の有害な有機塩素化合物は生成していないことが分かった。さらに、反応条件としては、酒石酸を用いた場合pHが2〜5、リンゴ酸を用いた場合pHが2〜3、酢酸を用いた場合pHが2〜3の条件で、それぞれ錯体を形成し、光反応が進行することが分かった。また、酒石酸を用いた場合にトリクロロエチレンの分解反応が停滞する現象が見られたが、これは光反応とともに酸素濃度が減少し、反応に必要な酸素が不足したためと考えられる。
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