研究概要 |
H19年度はAlをドープしたCo_2MnSiエピタキシャル電極の作製、及びそれらを下部電極とした強磁性トンネル接合の作製と評価を行った。Co_2MnAl_xSi_<1-x>(CMAS)電極はCo_2MnSiとCo_2MnA1のスパッタリングターゲットを同時放電させることによって成膜した。X線回折によって構造評価を行った結果,CMASの格子定数はドープしたAl濃度に対しほぼ線形に変化しており、第2相を生じさせることなくSiサイトを置換できていることが確認された。また原子間力顕微鏡によって表面像を観察した結果、平均表面ラフネスは5Å以下でありトンネル接合を作製するために十分平坦であることを確認することができた。 これらを電極とした強磁性トンネル接合を作製し、トンネル磁気抵抗比(TMR比)を測定した結果、 Alのドープ量に対しTMR比が減少する傾向が見られた。またトンネル分光法によって微分コンダクタンスのバイアス電圧依存性を測定した結果、ハーフメタリックなエネルギーギャップの価電子帯のエッジがAlのドープ量に応じフェルミ準位に近づく傾向があることが確認され、本研究の目的通りAlドープによってフェルミ準位の位置を制御できることを示すことができた。しかしながら伝導帯側に関しては当初予想していたようなフェルミ準位とのエネルギー差の増大を得ることはできなかった。このような結果はこの系のスピン分極率の温度依存性が、ギャップ中でのフェルミ準位以外にも依存することを示すものであり、極めて重要な知見である。
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