世界最高の磁力を有するNd-Fe-B系希土類永久磁石は、ハイブリッド自動車などの普及により小型・軽量の動力用高性能モーターにも採用され、市場規模が急激に拡大している。この高性能磁石には主成分として希土類元素のネオジム(Nd)が、高機能化のための添加剤として重希土のジスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)が用いられ、その生産量も増大している。しかし、重希土は地殻中の存在量が極めて少ない上に、その生産の9割以上を中国に依存しており、資源の安定供給に大きな問題を抱えている。つまり、重希土のリサイクルは資源政策上極めて重要であるが、その研究はほとんどなされていない。 以上の背景を踏まえ、本研究では磁石スクラップ中のDyやTbを効率よく再生するプロセスの開発を行った。スクラップには磁石の製造工程で発生するスラッジ(切削くず)や市中スクラップがあるが、いずれも酸素で汚染されており、含有する希土類酸化物を除去する必要がある。そこで、スクラップにフッ化物フラックスを添加して溶融し、スクラップ中の酸化物をフッ化物中に溶解・分離する方法を検討した。これは、比較的シンプルで、経済的にも見合う方法と考えられる。 平成19年度は当該のプロセスを構築するのに必要な、希土類酸化物-希土類フッ化物-フッ化リチウム系の平衡関係を探査した。特に、高温でのNd_2O_3-NdF_3-LiFの相関系を検討し、NdF_3-LiF浴にNd_2O_3を添加すると広い組成範囲でNdOFが生成することを明らかにした。また、フッ化物浴へのNdOFの溶解度は1200℃でも極めて小さく、溶解度を高める添加剤が必要であることがわかった。
|