金属と誘電体層が交互に存在する多層膜系では、それぞれの界面での表面プラズモンが結合し一体となったCoupled SPPが存在する。本研究では金属・誘電体のCoupled SPPと発光体が一体となった系における、新奇光機能性の発現を目的として研究を行った。 当年度は、まず有機発光材料に変わる発光体として、シリコンナノ構造である多孔質シリコン粉末の作製を行った。多孔質シレコンは、その孔のサイズにより発光ピークエネルギーの制御が可能であることが特徴であり、本研究の目的であるCoupled SPPとのカップリングを行う上で、非常に有利である。本研究では、多結晶シリコン粉末を化学的にエッチングすることで、高効率に発光する多孔質シリコン微粉末の作製に成功した。 作製した多孔質シリコンとSPPとのカップリングは、多孔質シリコン粉末からSPPへのエネルギー移動により生じることが期待される。そこで、多孔質シリコンから他の材料へのエネルギー移動に関する知見を集めるために、ヨウ素分子に対する系でのエネルギー移動のメカニズムの解明を行った。その結果、多孔質シリコンからヨウ素分子へのエネルギー移動は双極子相互作用を介したものであることがわかった。 本年度で得られた研究成果から、発光体である多孔質シリコンとCoupled SPPとのカップリングのために重要な要素であると考えられる、エネルギー移動に関する知見を得ることができた。本研究から、金属・誘電体多層構造と多孔質シリコンとの組み合わせにより、新奇光機能性の発現の可能性を示すことができた。
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