本年度は色分布のナチュラルネスと色知覚に関する以下の実験を行った。実空間を用いた実験では、奥行き方向におかれた2つの部屋において、奥の部屋の照明色を変化させ、異なる色の照明が混在する環境が色知覚に与える影響を検討した。各環境において、自然観察条件と、万華鏡を用いた空間の認識が困難な不自然観察条件を比較した。空間内に置かれたテスト刺激の色判定実験の結果、有彩色照明どうしの場合と比較して、白色照明と有彩色照明の組み合わせの場合は白色照明を基準にして色が認識される傾向が得られた。また不自然観察条件ではテスト刺激の背景の影響が大きいことから、空間認識の困難な場合は隣接する領域を基準として色認識が行われることが示唆された。また、実空間を撮影してディスプレイ画像として再現した場合、一定の色の恒常性は存在するが、実空間よりは下がる傾向が見られた。これは画像におけるナチュラルネスの減少と色の恒常性の相関関係を示唆している。 画像の色分布を細かく変化させることにより、不自然な色分布に順応した際の色知覚の変化についても検討した。自然画像を用いて、画像の色域を増大または減少させ、それぞれに順応した楊合における色の印象の評価実験を行った。その結果、色域の広い画像に順応した場合は、順応前は鮮やか過ぎると評価された画像が自然に、また色域が狭い画像に順応しだ場合は逆の傾向がみられた。すなわち、画像の色認識や自然さの判断は順応している環境に影響を受けることが示された。これらの研究成果は、空間・照明認識、環境のナチュラルネスが安定した色知覚に大きく関わること、色認識に対する視環境の重要性を示している。
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