研究概要 |
本研究では地球温暖化が高潮・洪水に及ぼす影響を計算機シミュレーションによって評価するための基礎技術の研究開発を目的としている.低気圧によって発生する高潮・洪水のリスクは2005年に米国を襲ったハリケーンカトリーナ以降,大きく注目されている.さらに,地球温暖化によって高潮・洪水の被害は拡大すると予想されている.研究代表者が開発に参加している高潮・洪水のシミュレーンモデルは,ハリケーンカトリーナ被災地の復興計画おいて新堤防システムの設計に用いられるなど高い有用性が確認されている.一方で,再現・予測シミュレーションを現実的な条件下で行っていく中でいくつかの課題も浮き彫りになった.本研究ではこれらの課題を解決するために非構造格子を用いた新しい計算モデルの提案を行った. 平成20年度の主な成果は以下の通りである.(1)平成19年度に提案した新しい氾濫解析手法の研究成果を取りまとめると同時に,それを実地形に適用することで提案モデルが実際の海域・氾濫原において安定かつ高精度に適用可能なことを確認した.(2)非構造格子によって高潮氾濫モデルを構築するには従来から大きな手間とコストが掛かっているが,この状況を改善し,モデル適用のためのコストを下げるための技術であるhp-adaptivity法を採用したモデルの開発に参加し,一定の成果を挙げた.(3)地球温暖化の高潮被害への影響を調査するモデル地域として,人口が集中し,海抜ゼロメートル以下の地形が広がる荒川下流域を選び,同地域における氾濫解析を行った.この結果から,現在日本での適用実績の少ない非構造格子モデルを日本の氾濫原における氾濫解析に適用した場合についての知見を得た.今後はこの成果を基に,日本だけでなく諸外国も含めた各地域において,できるだけ安価に信頼性の高い高潮・洪水・氾濫リスクの評価が可能な計算モデルの開発を進めていきたい.
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