本年度は成膜時の基板温度を変えてFePt合金薄膜を作製し、X線回折による構造解析、弾性定数と磁化曲線の測定を系統的に行った。基板温度は室温、200、420、700℃とした。基板にはMgO(001)単結晶とホウ珪酸ガラスを使用した。但し、700℃での成膜ではホウ珪酸ガラスにかえて石英ガラスを使用した。 X線回折の結果から、室温〜420℃で成膜したFePt合金薄膜はA1(不規則)構造となり、700℃で成膜するとL1_0構造となった。MgO基板上に成膜したFePt合金膜は420℃以上でエピタキシャル成長し、ガラス基板上に成膜したFePt合金はいずれも多結晶体であった。音響フォノン法を用いて縦波弾性定数C_33を測定したところ、L1_0構造のC_<33>はA1構造のそれに比べて大きく、約303GPaであることが明らかとなった。L1_0-FePt合金の弾性定数の測定値はこれまでに報告されておらず、第一原理計算から予測されていた値に比べて20%ほど小さいことが本研究で初めて示された。また、MgO基板上に成膜したFePt合金の磁化測定の結果から、磁気異方性エネルギーと弾性定数の関係を調べたところ、弾性定数の大きい合金膜ほど磁気異方性エネルギーが大きくなる傾向が見られた。L1_0-FePt合金ではc軸方向の原子問距離がa軸方向に比べて小さく、このc軸方向につぶれた結晶構造が弾性定数と磁気異方性エネルギーの上昇に寄与していると予想される。
|