研究概要 |
本研究では,製品構造を合理化することによって資源投入量や廃棄物発生量を低減する環境配慮型設計手法を提案することを目的としている. 本年度は,製品のCADモデルを入力として,そこから理論上最小となる製品の抽象構造を抽出し,これを元に再設計を行うことによって構造を合理化する手法を提案した.一般に,製品構造の合理化はノウハウに基づき各製品に対して個別に行われる傾向にあり,汎用的に利用可能な設計方法論は少ない.提案手法では,より広く機械製品に適用可能な方法として種々の機能部品や可動部品を複合的に含んだ製品構造の包括的な単純化を行うことを可能とした. また,製品の一生にわたる資源消費量や環境負荷を最小化する「製品ライフサイクル設計」に着目し,製品の適切なライフサイクルを実現するためのモジュール構造をCADモデルを用いて導出する手法を提案した.提案手法では,自己組織化マップ(Self-Organizing Map)を用いて属性が類似する部品群を算出しクラス分けを行うことで,同一クラスに属する部品がライフサイクルにおける同じ循環経路をたどるようにし,さらに「凸包密度」「包含関係」といった概念を導入しモジュール構造を幾何的観点から評価することによって,幾何的整合性を有するモジュール構造を生成することを可能とした. 提案手法を環境配慮型製品設計システムとして実装し,インクジェットプリンタやデジタルカメラといった実製品に適用することで手法の有効性を検証した.これにより提案手法は,環境配慮型設計において設計者の設計作業を有効に支援する手法であることが示された.
|