研究概要 |
固気流動層による乾式比重分離において,分離対象物が比重差どおりに浮沈せずに,分離精度の低下を招く場合があることが確かめられていた。これは,層内流れが発生し,層内の見掛け比重に分布が生じるためだと考えられる。したがって,流動性を制御することにより安定な比重分離の達成が期待できる。そこで,本研究では空気分散器の代表的な形式である2枚の多孔板の間に布を挟んだ構造を対象として,挟む布の圧力損失を変化させた分散器が層内の見掛け比重分布に及ぼす影響を検討した。 多孔板には,穴径0.2cm,ピッチ0.3cmのものを用いた。布は圧力損失が異なる4種類を用いた。見掛け比重分布の評価法として,電子天秤に吊るした直径2.7cmの鉛球を流動層内の中央部と壁付近に高さを変えて投入し,鉛球にかかる見掛け浮力を算出した。布の圧力損失が大きくなるにつれて,層内の中央部と壁付近の見掛け浮力差は小さくなり,最大の圧力損失を持つ分散器を用いた場合では,ほぼ浮力差が無くなる結果となった。また,圧力損失が最大の場合以外の分散器を用いた場合は,中央部の方が壁付近よりも見掛け浮力が大きい値となった。これは層内の中央部には上昇流,壁付近にはそれを補うための下降流が生じているためだと考えられる。したがって分散器の圧力損失が高い場合の方が,見掛け比重分布が小さくなり高精度分離の実現が期待できる。 続いて,最良と考えられる分散器の流動層において,直径1.9,3.0,3.8cmと物体サイズを変化させて浮沈実験を行い,物体サイズが浮沈挙動に及ぼす影響を検討した。その結果,1.9cmの小さな球は条件によっては比重差どおりに浮沈しない場合が見られたが,3.8cmの球は条件によらず高精度で分離可能であることが明らかとなった。これは,分散器の選定により,均一な流動化が達成できたためだと考えられる。
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