昨年度は、CT試験とボルト接合部の加力実験を行った。 木材の破壊靭性値を求めるための研究は各種行われているが、スタンダードな方法が確立していない。本研究者がこれまで行った研究の中で、CT試験から得られたJ積分値がボルト接合部におけるき裂発生荷重の推定に有用であると示唆する結果が得られている。しかしながら、CT試験に対しても、適正な寸法や実験方法の提案がほとんどなされていない現状である。そこで昨年度は、近年使用されることが多い樹種、特に集成材に用いられることの多い樹種に焦点を当て、それらの樹種を用いたCT試験を行った。その際、き裂寸法と試験体寸法を変化させた場合の実験を行い、その性状がどのように影響するのかの確認を行った。そして、それらの実験から得られる破壊靭性値はどのように分布されるのかを検討を行った。その結果、無次元き裂長さa_0/W=0.5〜0.6程度かつ試験体厚さが94mm以下であれば、安定的にき裂が進展する破壊性状になることがわかり、またそのような性状を示すものに対して、既往の破壊靭性値の算出式を適用した結果、既往の実験で行われてきた研究成果と同程度の破壊靭性値が得られることがわかった。上記の寸法を超えるような試験体の場合、破壊性状が脆性的に近づく傾向が見て取れた。よって、このような破壊性状に対しては別の破壊クライテリアを提案する必要があることがわかったので、そのことは本年度解明していきたいと考えている。 また、繊維直交方向に荷重を受ける接合部の実験とそれを対象とした有限要素解析を行った。その結果、ボルト孔からき裂が発生するのは、おおよそ最大荷重の70%程度であることがわかり、そのようにき裂が発生したものは、延性的にき裂が進展していく傾向が見て取れた。また、有限要素解析では既往の文献で示されている材料定数値を仮に入力した場合、き裂発生荷重を比較的推定できることがわかった。本年度は、更に精度を高めるための検討を行いたいと考えている。
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