研究概要 |
気液界面で蒸発・凝縮が起こっているとき,その界面を通過する気体の質量・運動量・エネルギを理論解析のみで定量的に予測することは現在のところ困難な状況にある.その理由に,気液界面における気体論境界条件には,蒸発・凝縮係数といった未知パラメータが含まれているため,未だその境界条件が完全に確立されてはいないからである.本研究は,分子気体力学,分子動力学を用いて,申請者が以前行っていた実験的研究結果を整理することで,蒸発・凝縮係数の決定を行い.また,キャビテーション気泡に代表される蒸発・凝縮を伴う気泡運動に対して,分子気体力学と気泡力学を用いて数値解析を行い,相変化を正確に取り入れた気泡力学の構築を目的とし行われる.本年度の研究結果より得られた知見は以下の通りである. 1.分子気体力学解析と衝撃波管の実験結果(申請者が昨年度行っていた)より,弱い凝縮状態下(平衡状態からのずれが小さい場合の凝縮状態)における水の凝縮係数は0.9から0.7程度の値であった. 2.気泡力学と分子気体力学を用いて,界面で相変化を伴う単一球形気泡の運動に対する数値計算法を確立した.その結果,気泡崩壊時の極限状態において,界面近傍の気泡内部に急峻な圧力上昇,温度上昇を確認した.この圧力上昇,温度上昇は界面での強い凝縮によって引き起こされる. 3.上述した気泡崩壊時の極限状態では,気液界面近傍の圧力・温度上昇に伴い,気泡中心の圧力・温度も急峻に上昇することを確認した.
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