<研究目的> カーボンナノチューブはグラフェンシートより構成されるため、電気伝導性・熱伝導性にも秀でている。多層カーボンナノチューブは、銅に比べて2桁以上大きな電流密度を得ることが可能であり、LSl多層配線技術において、特に層間配線材料として期待されている。本研究は、ビア構造へのカーポンナノチューブ埋め込みの基礎となるイオン注入による触媒形成およびカーボンナノチューブ成長を目的とする。 <研究方法> イオン注入は集束イオンビーム装置により行った。本装置には質量分離器が付属しているため、合金(Ni-P-Pt)からカーボンナノチューブ成長の触媒となるNiイオンのみを分離し注入した。基板として、SiO2膜およびAl膜を使用した。また、AlとNiの合金化を防ぐためにAl膜上にSiO2膜をバリアとして堆積した構造も用いた。この構造の場合、イオン注入後にSiO2をフッ酸により除去した。カーボンナノチューブは先端放電型リモートプラズマCVD装置により水素・メタン混合ガスを分解することによって合成した。 <研究成果> 条件の最適化によりSiO2膜に打ち込んだNi触媒から垂直配向カーボンナノチューブが得られた。配線応用には金属上での触媒形成が必須であるが、Al膜に注入した触媒からはカーポンナノチューブが得られなかった。これは、注入されたNiイオンとAlが衝突によって合金化してしまったためだと考えられる。これに対して、SiO2/Al構造に注入したNi触媒からはカーボンナノチューブが得られた。SiO2との衝突によりNiイオンがエネルギーを失い、合金化することなくAl膜上に堆積できたためである。さらにSiO2の膜厚を調節することによって、従来の1/10程度のイオン注入量でカーボンナノチューブの合成に成功した。
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