本研究では、集光点(熱源)からの熱伝導を解析するために、フィゾー干渉計を用いた試料間隙の時間分解計測システムの構築に関する要素技術の開発を行った。具体的には、フィゾー干渉計とほぼ同じ原理のマイケルソン干渉計を構築し、参照基準反射鏡と被検反射鏡からの両反射光束間の位相差を定量的に測定する技術開発を行った。マイケルソン干渉計の光源としては、ヘリウム-ネオンレーザー(波長632.8nm)を用いた。光源から射出された光は、焦点距離f1=100mmの凸レンズとf2=200mmの凸レンズにより、ビーム径を拡大し、ビームスプリッターにより2つの光束に分割した。その後、参照基準反射鏡と被検反射鏡により反射された各光束をビームスプリッターにより再度重ね合わせた。各反射鏡からの光束を重ね合わせた場合、光路差に応じた干渉縞が形成された。ここで、干渉縞の次数が1つ変化するためには、レーザー波長に相当する光路差の変化が必要であることに注意すると、被検反射鏡が波長の半分移動すれば干渉縞の次数が1つ変化することがわかる。つまり、被検反射鏡が波長の半分より大きく変化すれば、2つ以上の明るい縞、あるいは、暗い縞が現れることになる。実際にどの程度、被検反射鏡が変化したかを定量的に測定するためには、各干渉縞より位相を求め、それらの位相をつなぎ合わせる位相接続(アンラッピング)作業を行う必要がある。そこで、干渉計により形成された干渉縞をCCD (Charge-Coupled Device)カメラにより撮影し、画像ボードを用いることにより、ディジタルデータとして計算機に取り込んだ。取り込んだ画像の各ピクセルから各位相を求め、各ピクセル間の位相情報を比較することにより、位相接続を行った。この操作を画像全体にわたり行い、2次元的に位相変化を求めた。この結果からは、参照基準反射鏡と被検反射鏡の行路差を求めることもできる。つまり、試料間隙に相当する情報を得る技術開発を行ったことになり、今後、時系列画像を取得し、それらに本技術を適応すれば、試料間隙の時間分解計測システムが構築できると考えられる。
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