セラミックス基複合材料の性能は繊維-マトリックス界面の特性に強く依存する。しかしその重要性に反し、従来の破壊抵抗評価においては複合材料をあたかも均質体のように取り扱い、必ずしも界面特性の寄与を考慮した評価法が確立されているわけではない。本研究は複合材料の設計基準として重要となる損傷開始強度に関して、複合材料独特のクラック進展挙動の解析から複合材料の破壊抵抗を定義し、定量化することを目的とした。平成19年度では、損傷蓄積過程における不可逆エネルギーの寄与を分離・定量化する方法を提案した。平成20年度は本手法を活用し、主として複合材料の破壊抵抗に及ぼす織物構造の寄与を評価した。ナノインフィルトレーション遷移共晶相で作製されたSiC/SiC複合材料のノッチ鈍感性はすでに報告したが、さらに検討を重ねた結果、適切な界面制御を施すことで界面での亀裂の分岐を誘発することが可能な場合に限り、主軸引張強度特性のノッチ鈍感性が得られることが判明した。一方で、強固な界面構造を有する場合では、脆性セラミックスと同様に著しいノッチ感受性を示すことがわかった。さらに非主軸引張負荷条件でのノッチ感受性を評価したところ、ノッチ深さに依存した傾向を示すことが明らかとなった。エネルギー解析結果によると、初期リガメント幅が大きい場合は、面内剪断強度に依存して亀裂進展が生じるのに対し、初期リガメント幅が小さい条件では、主軸試験のエネルギーと同等となり亀裂の生成機構が主軸試験と非主軸試験で同等であることが示唆された。本結果より、複雑な破壊機構のセラミックス基複合材料の破壊エネルギー評価の基盤が築くことができた。また二次的に、グリップ法など従来試験技術的に困難な主軸強度評価を、ノッチ試験片を用いた非主軸試験によって達成可能となった。
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