研究概要 |
ウランの回収を目的とした電池型バイオリアクターの開発において,電極からウランへの電子移動効率はリアクターの性能を決める重要な因子である.本年度は,溶液中のウランの化学状態および電極表面の化学修飾が,電極からウランへの電子移動に与える影響について調べた. U(VI)の溶液にシュウ酸,マロン酸,コハク酸,アジピン酸,リンゴ酸,または酒石酸を加え,ウラン-有機酸錯体のサイクリックボルタモグラム(CV)を測定した.各有機酸溶液において,U(VI)/U(V)の還元ピークおよびU(V)の不均化反応で生じたと考えられるU(IV)の酸化ピークが観測された.これらのピークは有機酸の種類によって電位が異なった.還元ピークの電位をU(VI)一有機酸錯体の錯形成定数の対数値(logβ)に対してプロットすると,還元ピークの電位は,logβの増加に伴って直線的に低くなることが明らかになった.この結果から,U(VI)が溶液中の有機酸と錯体として溶解している場合には,錯生成能が大きな有機酸の存在下ほど,電極からウランへの電子移動が起こりにくくなることがわかった. 次に,ウランと親和性の高いリン酸を表面に修飾させたITO電極にウランを吸着させ,U(VI)のCVを測定した.リン酸を修飾した電極では修飾しない場合に比べて約4倍のU(VI)の還元電流が観測され,より多くのウランが電極で還元されていることがわかった.これより,ウランと親和性の高い官能基を電極表面に修飾することにより,電極からウランへの電子移動効率を向上できる可能性が示唆された.
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