本研究は、バイオセンシング、マイクロリアクター、マイクロデバイス等に応用可能な、高吸着性を有する超撥水表面の開発および応用展開を目指すものである。超撥水表面の多くは、水に対する高い撥水性を利用した材料に用いられている。申請者は、超撥水表面に新たな機能として、撥水性と相反する物性である水滴吸着性を与え、微小量の水滴操作を目指している。さらに、その水滴吸着力を、光、電気、磁気、熱などの容易に得られる外部エネルギーによって変化させ、微少量水滴の外場応答による吸着力制御を最終目的としている。本年度は以下の2項目(1.高吸着性超撥水基板の作製プロセスの確立、2.高吸着性超撥水基板の評価法の確立)について検討した。 疎水性高分子で構成されたハニカムフィルムを鋳型とし、親水性の金属を無電解めっきにより析出させ、規則構造を有する金属-高分子複合構造体を作製した。疎水性高分子構造体中に親水性の金属ドメインを形成させることで、規則構造由来の撥水性と表面エネルギーの低い金属由来の吸着性という、相反する性質を併せもった新規機能性膜を作製できた。得られた高吸着性超撥水基板における撥水性の評価には水との接触角測定、吸着性の評価には水滴の滑り角測定を用いて検討した結果、液滴吸着性は、鋳型として利用した自己組織化ハニカムフィルムの周期構造と、作製時の無電解めっきの条件によって変化することがわかった。このような結果は、次年度で実施予定である吸着性制御の足がかりとなりうる。
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