研究概要 |
20年度は19年度の成果を利用して、チタニアアルコキシドからの水和ゲルを液化炭酸ガスを超臨界媒体として、9.8MP及び温度100℃で超臨界乾燥させ、その後数時間の結晶化加熱処理をして得たアナターゼ相チタニア・アエロゲル(以後TAGと略)を粉砕した粉末(平均粒径14nm)を出発原料に用い、強アルカリNaOH中に分散させた溶液から水熱合成し、次にその中和洗浄過程で、HNO_3とAgNO_3、あるいはHClとAgNO_3溶液を用いてPH値を8程度に調整し、従来にない数ミクロンの長尺の、AgClあるいはAg^+担持したチタニア(あるいはチタネート(Na_xH_<2-x>Ti_3O_7))多層ナノチューブ(以後TMWNTと略する)を先ず作製し、そのTiO6八面体の層構造・形態、電気電導度、熱伝導率などを電子顕微鏡観察(TEM,EDS,EELS等)によって調べた。また、多色のphotochromismが出現するかどうかも調べた。その結果以下が得られた。 1)AgあるいはAgCl粒子はチューブの内外に担持され、その粒径は1.7〜8.7nmに分布し、その内70%は1.7〜2.6nmに集中する。 2)チューブの内径は4〜7nm、外径は10nmの多層構造で、部分によってその層数に違いがあること、また上層と下層で層数に差があること、等が観察される。但し、層数は異なるものの、層間距離は約0.7nmでほぼ一定である。これらはTMWNTの生成にも関連するものと考えられる。 3)先ず、Ag+担持した試料にUV光で照射し光還元によってAg化する。次に、単色化した可視照射光で照射する時、多色のphotochromismを示した。着色原理は表面プラズモン共鳴による電子移動と、titania上吸着酸素の電子蓄積と考えられる。 4)次に、当該研究提案の全角回転電子線トモグラフィーを用いて作製したチタニアナノチューブをトモグラフィー観察し、従来の二次元投影情報では得られなかった、巻き方・層厚・アスペクト比など、より正確な3次元構造解析を実現した。
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