ふと日常何気なく使っている手を見てみると、とてもおもしろい形をしていることに気付く。ヒトは手足に5本の指をもっており、それぞれの指は前後軸上に沿って異なる形態をしている。親指は他の指と比べて指骨の数が少なく短い。また小指は中央の3本の指に比べて小さい。それではこのようなそれぞれの指のかたち作りの違いはどのような分子メカニズムによって決まっているのであろうか? 今回アメリカWisconsin大との研究により、親指から小指にかけての指のかたちの違いは、胎児期において指の発生中に指先の細胞群が受け取るBMP(骨形成成長因子)の量の違いによって生み出される事が分かった。 この中でBMPは発生中の水かき(指間部)の部分から供給されており、そのシグナルは指先の部分の100個ほどの細胞集団に伝わっている事が分かった。今回この領域を新たにPFR(phalanx forming region)と名付けた。このPFRの細胞群はこの細胞領域だけで指を作る事ができる。以上の結果をPNASに報告した。 これまで親指(thumbs)と人差し指の違いなどを、分レベルで示した結果は無く、今回の成果はヒトを含めた陸上四肢類の手足の進化の仕組み、何故ヒトの指は5本あるのかを解き明かす大きな糸口となる。同じ号の特集記事では"All thumbs: 不器用な人"なんて分子生物学的にいないんですよ、と紹介された。 また指形成に重要な細胞群が見つかった事で、今後の指の再生研究への応用も期待される。
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