DNA代謝反応において、DNA合成酵素の合成速度や1本鎖DNA領域と各種タンパク質間相互作用の解析を行われてきた。しかし、現在までに得られている知見の多くが多分子の平均的な挙動から得られたものであり、反応機構や機能など個々の分子の挙動がどのような分布をもっているのかを示したものではない。1分子DNAおよびタンパク質の精密解析を行うために、蛍光顕微鏡視野内で反応を1分子レベルでの測定技術を確立し、解析することが有効と考え研究を実施した。 はじめに、各種DNA合成酵素を用いた単位時間当たりの合成速度の計測を行った。その結果、TaqDNAポリメラーゼは800-900塩基/分、T7DNAポリメラーゼは3000-3200塩基/分、DNAポリメラーゼ1は1000-1100塩基/分、DNAポリメラーゼβは2000-2100塩基/分となった。この結果より、短いDNA合成が得意とされていたDNAポリメラーゼβが2000塩基を超える合成が可能であることが判明した。次に、1本鎖DNA領域を安定的に観察する方法はほとんどなく、DNA観察の大きな問題となっている。その問題を解決するために、DNA代謝反応に関与するDNA複製因子A(Replication Protein A:RPA)に着目し、黄色蛍光タンパク質(YFP)とRPAとの融合タンパク質を作製した。1本鎖DNAの観察に、このRPA-YFPタンパク質を用いた。その結果、1本鎖DNAを安定化させ安定的に可視化することに成功した。
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