コルチコイドの標的細胞において、哺乳類では1型と2型ステロイド代謝酵素の一つである11β-水酸基脱水素酵素(11β-HSD)が存在しコルチゾルの標的器官で相互に作用しあうことにより、コルチゾル量を必要に応じて最適化する働きがあることが分かっている。そこで本研究では、真骨類においても2種類の11β-HSDが存在し、海水・淡水適応時にコルチゾルを必要に応じて鰓にて局所的に調節することにより、浸透圧調節機能を制御しているとの仮説を検証した。真骨類において哺乳類2型11β-HSDオーソログが単離されているが、1型11β-HSDのオーソログはまだ単離されていない。真骨類のゲノムデータベース上に3型11β-HSDという1型に配列が似た遺伝子が存在することが明らかになっていることから、本研究ではニジマスより3型11β-HSD遺伝子のクローニングを行い、3型11β-HSD様遺伝子の機能解析を行った。まず、小麦胚芽無細胞タンパク質合成システムを用いて3型11β-HSD様遺伝子の合成を行い、その酵素活性の解析を試みたが得られたタンパク質に酵素の活性が見られなかった。そこで次に動物性培養細胞を用いて3型11β-HSD遺伝子を発現させることにより酵素活性の解析を行ったが、この発現系においてもコルチコイドに対する代謝活性は見られなかった。しかしながら、3型11β-HSD遺伝子は鰓で特異的に発現し、異なる塩分環境において発現変化をしていることから、浸透圧調節に関わっている可能性は高い。今後、さらにノックダウン等の方法を用いて3型11β-HSDの生理学的機能を解析する必要があると考えている。
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