本研究は単細胞性の緑藻であるクラミドモナスを用いて、未知である藻類の時計遺伝子、および生物時計による葉緑体ゲノムの概日制御に関わる遺伝子群(葉緑体概日リズム制御因子)を網羅的に同定することを目的とする。 今年度は昨年度に分離した「葉緑体リズム変異株」において、核遺伝子の概日リズムを調べた。そのために、ルシフェラーゼレポーターによる遺伝子発現のリアルタイム測定法をクラミドモナスの核遺伝子に応用することを試みた。クラミドモナスの核ゲノムは極めてGCに富み、ホタル由来のルシフェラーゼはほとんど発現しない。そこで、ホタルルシフェラーゼ遺伝子のコドンをクラミドモナスの核ゲノムに最適化した遺伝子を人工合成した。そのコドン最適化ルシフェラーゼ遺伝子にクラミドモナスの時計遺伝子のプロモーター配列を連結したレポーター遺伝子を作製し、クラミドモナスの核ゲノムに移入することで、時計遺伝子の概日リズムを生物発光としてリアルタイム測定することを可能にした。次に、このレポーター株を葉緑体リズム変異株と交配することにより、葉緑体リズム変異株における核遺伝子の発現リズムを観察した。その結果、大多数の葉緑体リズム変異株において、核の生物発光リズムも葉緑体の生物発光リズムと同様の変異型の表現型を示すことが明らかになった。
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