研究課題
若手研究(スタートアップ)
生体膜脂質二重層の外層に主に存在するスフィンゴ脂質は、細胞内外のシグナル伝達に重要な役割をはたしている事が知られている。本研究ではスフィンゴ脂質シグナリングの解明に向けて、(1) スフィンゴミエリン合成酵素の翻訳後修飾による局在制御機構の解析,(2) 出芽酵母のスフィンゴ脂質代謝異常高感受性変異株の探索とその表現型の解析を行った。(1) 最近、遺伝子クローニングが行われたスフィンゴミエリン合成酵素には、ゴルジ体に局在する合成酵素1と大部分が形質膜に局在する合成酵素2の2種類が存在することが既に知られている。本研究では翻訳後修飾に注目し、合成酵素2のみが特異的にC末端部においてパルミトイル化と呼ばれる脂質修飾を受けていることを発見した。パルミトイル化が欠損した合成酵素2は、形質膜に局在することができずゴルジ体に局在することから、パルミトイル化はスフィンゴミエリン合成酵素の形質膜局在に関与することが示唆された。(2) 出芽酵母遺伝子ノックアウトライブラリー約4800株全てを対象として大規模スクリーニングを行い、スフィンゴ脂質合成酵素阻害剤による生育阻害に対して高感受性を示す遺伝子欠損株を合計18株単離した。これらの株の表現型解析を詳細に行った結果、細胞内シグナル伝達及び小胞輸送に関わるホスホイノチシドリン酸の量的変動が水酸化脂肪酸を持った複合スフィンゴ脂質の欠損と相互作用することで、酵母が致死となることを明らかにした。このことより特定の構造を持つ複数のリン脂質の代謝異常が相互作用することで、生命の維持に重大な影響を及ぼすことが明らかとなった。また、液胞のH^+-ATPaseの欠損により、セラミドが誘導する生育阻害に対して高感受性となることを明らかにした。
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Biochem Biophys Res Commun 381
ページ: 328-332
J Biol Chem 284
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