シアノバクテリアの葉緑体特異的リボソームタンパク質psrp1遺伝子およびpsrp3遺伝子の過剰発現株を新たに作成し、PSRP1遺伝子の破壊株や過剰発現株の生育解析を行った。 PSRP1過剰発現株では、PSRP1が過剰に存在しているにもかかわらず液体培養では野生株と生育に差がないのに対し、固体培地上では生育が抑制された。このことはPSRP1と共同して翻訳制御に働く因子が存在し、固体培地の環境で誘導されていることを示唆する。PSRP1欠損株では、同様に液体培養の環境で生育に影響はないが、液体培養+高温ストレス下では定常期の生育が抑制される。また固体培地では野生株より生育が促進するが、固体培地+高温ストレス下では逆に野生株より速やかに死滅することがわかった。したがってPSRP1は生育を抑制する一方で、熱ストレス耐性を上昇させることが明らかとなった。以上より高温や細胞密度が高い条件のような環境ストレスに応答して、PSRP1および共同して働く因子が翻訳を制御しており、環境に応じた生存に有利な翻訳状態を作り出していることが示唆された。 一方、PSRP3の働きに関しては、psrp3遺伝子の完全な欠失変異体は作成できなかったことから、基本的な翻訳因子として働いていることが期待された。またpsrp3遺伝子の転写はは光によって誘導されたことから、光環境に応答した翻訳調節に関与していることが示唆された。 このような環境応答による翻訳制御は、葉緑体翻訳系においても継承されている可能性がある。これらの結果は葉緑体における翻訳制御を解析し比較していくにあたって重要な知見となると思われる。以上の結果を論文報告するために執筆中である。
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