MAPキナーゼカスケードによる植物細胞板形成の分子機構を明らかにするために、(1)MAPキナーゼカスケードの下流因子の解析と、(2)MAPキナーゼカスケードの上流の制御因子の同定を行っている。(1)について、生化学的なスクリーニングと質量分析を組み合わせて新規下流因子の同定を進めるとともに、シロイヌナズナのデータベースを用いたin silico解析により、MAPキナーゼによってリン酸化される可能性のあるタンパク質の網羅的な検索を進めた。本年度は、ire silico解析により下流因子の候補として見いだされたAtKinesin l3Bに注目し、生化学的、解析を行った。Atkinesin l3Bは、多くの生物で微小管脱重合活性を持つことが知られているKinesin13ファミリーと相同性を示すキネシン様タンパク質である。Atkinesinl3Bは、in vitroでMAPキナーゼによりリン酸化されることがわかり、主要なリン酸化サイトも明らかとなった。また、GFP融合タンパク質を用いた解析から、このタンパク質は細胞質分裂時に染色体とともに細胞板にも局在することが示された。細胞板に局在することから、このタンパク質が細胞板形成に関与している可能性が示唆された。(2)について、生化学的な解析から、細胞板形成を制御するMAPキナーゼカスケードの最上流因子であるNPKI MAPキナーゼ・キナーゼ・キナーゼ及び、その活性化因子であるNACK1が共にin vitroでCDKによりリン酸化されることが分かった。CDKによるリン酸化は、in vitroで両タンパク質の直接結合を阻害した。NPK1はNACK1との直接結合により活性化されることから、CDKがMAPキナーゼカスケードの活性化及び活性化の時期を制御している可能性が示唆された。本年度は、今回新たに明らかとなった下流因子、上流因子について、in vivoでの機能、リン酸化による機能制御機構の解析を進める予定である。
|