概日時計は地球環境に適応するため、バクテリアなどの下等な生き物からヒトに至るまでほとんどすべての生物が獲得している生命現象である。近年では様々な疾患と概日時計の関係が明らかにされつつあり、概日時計の研究は医療の現場からも注目されている。しかし、周期の安定性、外環境に対する同調機構、固体楽組織、細胞などの多階層での制御・同調、出力機構、現象の生物種普遍性など、解くべき課題の多い重要な現象でもある。概日時計を最も単純な生物である、シアノバクテリア細胞内における概日振動維持の分子メカニズムをKaicの分解調節の観点から検証することによって、24時間という比較的長い振動の周期や振幅の安定性機構を探る。本研究は、Kaicの分解機構解明研究の導入部としてKaic分解に関わるプロテアーゼの同定および、分解機構を簡便にモニターする系を確立する事を目的としている。今年度の研究においては、基本的な実験環境の整備から行う必要があり、インキュベーターを購入し、これに光制御や通気装置等の改良を加えて、シアノバクテリアの為の培養環境整備を行った。また、プロモーター活性リズムの測定を簡便に行うため、光電子倍増管による発光測定装置を導入し、その電気制御装置等を作成し、概日振動の自動モニタリングを可能にした。さらに、Synechococcus elongates PCC 6301のゲノムデータベースから、20種のプロテアーゼ関連遺伝子の情報の検索を行い、これらの遺伝子の網羅的な破壊株の作成を行った。現在、これらの変異体のkaiBCプロモーター活性を測定し、概日リズム表現型を確認中である。また、遺伝子過剰発現体の作成も現在行っている。これらの成果及び計画を第14回日本時間生物学会学術大会と日本睡眠学会第32回定期学術集会の合同大会において発表した。
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