昆虫において胚発生時に卵巣由来のエクジステロイドが重要な役割を果たす。カイコにおいて卵巣のエクジステロイドはエクジステロイドリン酸化酵素(EcKinase)により不活性なリン酸型として蓄積し、発生時に卵に移行したリン酸型エクジステロイドがエクジステロイドリン酸脱リン酸化酵素(EPPase)により活性化され胚発生にはたらく。本研究はこの機構の更なる解析を目的としている。 1.発育中の卵巣でエクジステロイド合成酵素(シトクロムP450酵素)およびEcKinaseのmRNAを逆転写PCRとレーザーマイクロダイセクションを組み合わせ検出した。エクジステロイド合成酵素は濾胞細胞に局在していた。また、EcKinaseのmRNAは栄養細胞と卵母細胞に検出された。EcKinaseの発現をNorthern Blot、免疫染色を用いてさらに解析を行い、栄養細胞で合成されたmRNAは卵母細胞に輸送されタンパク質に翻訳されること、卵母細胞自体でEcKinaseのmRNA合成が行われている事を明らかにした。結果は論文1件、学会発表2件として発表。さらに、論文1件が掲載決定している。 2.バキュロウイルスとSf9細胞を用いて組換えEcKinase発現系を構築し、立体構造解析に必要な量の精製EcKinaseを得る。本年度は、組換えタンパク質がEcKinaseとして機能する事を確認し、精製を行った。今後、X線結晶構造解析を共同研究者と共に試みる。 3.バキュロウイルスとSf9細胞を用いて組換えEPPase発現系を構築し、精製EPPaseを得た。また、アミノ酸配列から予測される酵素活性に重要な部位に変異を導入したEPPaseを発現系により得、酵素活性に及ぼす影響を解析した。結果は学会発表1件として発表した。 1から3及び本研究以前に得られた知見を併せ、総説1件として掲載決定している。
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