DNA複製チェックポイント機構はDNA複製時のストレス応答の司令官的役割を果たしている。複製時の異常を感知し、その修復に必要な時間を作るため、細胞周期を止めたり再開させたりするメカニズムである。このDNA複製チェックポイント機構は蛋白質のリン酸化のカスケードによって活性化され、下流の細胞周期エンジンへと伝えられる。中でも重要な因子は分裂酵母で見いだされたRad9-Cut5(ヒト;hRad9-TOPBP1)複合体である。Rad9-Cut5複合体はDNA複製チェックポイントの発動に際してRad9のリン酸化を介して形成され、その活性化に必須である。本研究においてはDNA複製チェックポイントの活性化が細胞内の何処で発生し、時間経過とともに伝わっていく様子を明らかにする。私がこれまでに解析を進めてきたRad9-Cut5複合体を材料に一分子FRET法を用い、チェックポイントが活性化しRad9がリン酸化を受けると特異的な蛍光を発するモジュールを作成する。これまでに個々のチェックポイントタンパク質の挙動を生細胞中で追った報告はあるが、活性そのものを検出した報告はない。また、チェックポイント活性を細胞内で視覚的に検出するツールは遺伝学的なスクリーニングへの応用も利く他、多生物種への応用も可能と考えている。 本年度は主に一分子FRETモジュールの作成に携わった。現在までにポジティブコントロールおよび、ネガティブコントロールも含めたすべてのモジュールの作製を完了した。酵母内で発現可能なプラスミドに挿入した。蛍光蛋白質の種類、用いる蛋白質領域も自由に入れ替えが出来る様に調節済みである。現在、酵母細胞にその発現モジュールを導入しているところである。
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