研究概要 |
植物において、24ntのcasiRNAはゲノムDNAのメチル化を誘導し、遺伝子の発現を抑制すると考えられている。この機構をRNA-directed DNA methylation(RdDM)と呼ぶ。乾燥ストレス下においてRdDMによって発現制御を受ける遺伝子を同定するために、未処理時、乾燥2時間目に野生型植物、casiRNA生合成の必須因子の変異体rdr2およびDNAメチル化酵素の三重変異体ddc(drm1drm2cmt3)からRNAを抽出し、全ゲノムタイリングアレイ解析を行った。タイリングアレイを用いることで、既知遺伝子だけではなく、新規転写単位の発現を予測することができる。まず、未処理時について、各植物間でのアレイデータの比較を行った。各変異体において発現が増加した遺伝子の中で、遺伝子の上流と下流500bp以内の範囲にcasiRNAがマップされるものを探した。その結果、少なくとも18個の既知遺伝子と19個の新規転写単位がRdDMによって直接制御されている遺伝子候補として同定することができた。内在性のRdDM制御遺伝子の同定は、RdDM機構の詳細な解析に活かされるはずである。この成果は学術論文として(BBRC,376:553-557,2008)に掲載された。さらに、乾燥ストレス下において、野生型では発現応答しないが、変異体においては発現応答が認められる既知遺伝子および新規転写単位が数個みつかってきた。この発見は、casiRNAによるDNAメチル化が遺伝子のストレス応答を隠していることを意味する。それらの遺伝子の発現の確認および構成配列(リピート配列を含むか否か)の確定を行った。
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