本研究は、木材腐朽が生じた木質構造物の耐力・変形性能を調べることで構造物の残存性能の評価に資するものである。実験室レベルで実施可能な腐朽処理であること、大きな力を受ける箇所を集中的に腐朽させること、対象は実大寸法の木質構造物であることに留意して実験を行った。 当該年度はスパン3000mm、束材間隔500mm、上下弦材の心々距離330mmの平行弦トラス梁を研究対象とした。斜材および束材を2枚の弦材で挟み込み径10mmのボルトで接合した。斜材のボルト接合部に腐朽が生じている場合を想定し、620×60×30mmのトドマツ製材のボルト先穴部に褐色腐朽菌オオウズラタケを用いて強制腐朽処理を施した。平行弦トラス梁1体につき斜材は6本あり、そのうち1本を腐朽処理材とした。 平行弦トラス梁に対して3等分点4点曲げ試験を行った。加力点間の斜材に腐朽処理材を配置した場合、腐朽処理を施したボルト先穴に顕著なめりこみ変形は見られず、初期剛性と最大荷重はコントロール試験体とほぼ等しい値を示した。 支点と加力点の間の斜材に腐朽処理材を配置した場合、腐朽処理材のボルト先穴には顕著なめりこみ変形が見られ、初期剛性は9〜17%低下した。支点と加力点の間では梁にせん断力が生じるため、斜材が梁のせん断力を負担できるか否かによって初期剛性に差が生じたものと考えられる。腐朽の有無にかかわらず平行弦トラス梁はボルト接合部から割裂破壊が生じたが最初に破壊する部位は異なり、梁端部側の斜材に腐朽処理材を配置した梁の最大荷重はコントロール試験体よりも18%程高い値を示した。荷重と変形の大きさによって平行弦トラス梁の抵抗メカニズムは異なり、それが腐朽の影響によって曲げ性能に変化が生じることが示唆された。
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