研究概要 |
平成19年度の研究計画として、(1)鞘内免疫がどこに効くのか?(2)鞘内免疫が何を誘導するのか、を解明すること、(3)狂犬病ウイルス遺伝子のクローニングと細胞の準備、を掲げた。(1)と(2)に関しては、マウスに鞘内免疫後、致死量の狂犬病ウイルスを脳内接種する実験を行った。マウスの症状と体重変化の記録、脳を含む全身諸臓器の標本作製と病変観察、脳脊髄内の蛋白質の発現解析を行った結果、対照群に比べて鞘内免疫マウスの生存率は有意に上昇し、同マウスの脳病変やウイルスの増殖は軽度であることが判明した。すなわち鞘内免疫法はマウス脳内において狂犬病ウイルスの増殖を阻止する効果があるということを実験的に証明することができた。また、鞘内免疫マウスの脳脊髄内には多量の抗原特異抗体が誘導されていることが判明した。狂犬病はその原因ウイルスが咬傷部位等の末梢組織から神経細胞を上行し、脳脊髄内で増殖することにより発症する致死的疾患であるが、未だ有効な治療法はなく、本実験結果は狂犬病の治療法を確立する上で有意義な成績である。以上の成果を第145回獣医学術集会にて発表した。現在、脳脊髄中の抗原特異抗体がどこから誘導されてくるのかについて検討を進めている。(3)に関しては、狂犬病ウイルス感染マウスの脳から RNAを抽出し、NP, P, M遺伝子の増幅を行ったところ、各遺伝子に特異的なバンドが検出されたため、シークエンス解析と発現ベクターの作製を進めている。また、今後の解析の準備として、現在使用しているマウスの神経芽細胞腫由来細胞以外の5種類の細胞を購入し、培養・増殖してストックした。
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