アブラナ科自家不和合性における認識反応以降の分子メカニズムを明らかにすることを目標に、Brassica rapa自家和合性突然変異体での遺伝解析とモデル植物シロイヌナズナ(自家和合性)での自家不和合性形質転換体の作出を試みた。 1.B. rapaに関する研究 B. rapa自家和合性突然変異体5系統と自家不和合性系統の交配より作出したF_1を育成し、各交配系統約100粒のF_2種子を獲得した。採種後、各後代F_2集団より20個体を任意選抜し、温室内で栽培し自家不和合性表現型を決定した。遺伝子型については、B. rapa連鎖地図に座上する113個のSSRマーカーの多型を各両親間で調査し、約80個の多型を有するSSRマーカーを選抜した。これらSSRマーカーについて、後代F_2集団での各遺伝子座の遺伝子型をPCR法によって決定した。 2.シロイヌナズナに関する研究 3種の異なるエコタイプ(#1、#2、Col-0)より自家不和合性雄蕊認識因子SP11/SCRをPCR法により単離し、その塩基配列を解読した。その結果、C末端側領域にすべてのエコタイプに共通する変異を見出した。また、エコタイプ#1、#2ではN末端領域に5bpの欠失、Col-0では変異境界領域に13bpの重複が存在することを見出した。これら変異をPCR法によって修復し、正常復元型SP11を構築した。タペート細胞特異的プロモーターと共に形質転換用ベクターに連結し、エコタイプ#1、#2に遺伝子導入した。各エコタイプよりT_0種子を獲得し、現在、植物体の育成中である。
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