研究概要 |
本研究は、真核生物の単細胞モデル生物である分裂酵母を用い、細胞形態形成と細胞増殖との連携制御機構の解明を目指している。本研究では、中心体から発信される細胞極性ネットワークMOR (Morphogenesis Orb6 Network)1)について、(目的1)本ネットワークの細胞極性制御における分子機構の解明、(目的2)本ネットワークの破綻(細胞極性異常)をモニターする新規チェックポイント機構(細胞周期遅延機構)の解明を目的とし、以下の研究を行った。 (目的1)(1)以前の解析から、MORの上流で機能する進化上保存されたMO25-like/Pmo25が、M期特異的に中心体(spindle pole body)に局在し、細胞質分裂の開始を制御するSIN(Septation Initiation Network)からのシグナルをMORに伝える上で重要なコネクターという役割を担うことが示唆された1)2)。私は、SINを構成的に活性化することにより、Pmo25をSPBにリクルートし、さらに、NDR kinase/Orb6(MOR下流分子)のkinase活性の減少を伴う細胞極性異常を引き起こすことを見いだした。つまり、M期では、SINが活性化し、Pmo25を中心体にとどめ、細胞質分裂が完了するまでの間、細胞極性の確立に重要なOrb6 kinaseの活性化を阻害していることが示唆された(現在論文投稿中)。 (2)MORの新たな構成分子を同定するために、GC kinase/Nak1の結合分子の機能解析を行った。2-hybrid systemにより取得されたNak1結合候補分子の一つが、出芽酵母でMORと相同な経路であるRAM経路(regulation of Ace2p activity and cellular morphogenesis)の構成分子であった。そこで、同定分子のMORにおける機能を明らかにするため、まずエピトープ(GFP、 HA、 Myc)を連結した。さらに、PCR mutagenesisにより、変異体を取得し、その表現型が、高温で球形の極性異常を示すことがわかった(MOR変異体と同様の表現型)。今後、MORにおける機能の詳細を明らかにしていきたい。(目的2)mor2変異体により誘導されるWeel依存的G2期遅延機構を解明するため、非必須kinase破壊体(89株)とmor2変異体の二重変異体を構築し、その表現型を調べた。その結果、mor2変異体と合成致死性を示すkinaseは存在しなかったが、mor2変異体の高温感受性を促進するkinaseを取得した。 1)M. Kanai, K. Kume, et. al. EMBO J.24:3012-3025(2005) 2)K. Kume, et. al. Biosci. Biotechnol, Biochem, 71(2):615-617(2007).
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