中枢神経系は、主に神経細胞とグリア細胞により構築されており、グリア細胞の活性変化は、脳虚血やアルツハイマー病等の神経変性疾患発症メカニズムに深く関与することが指摘されている。一方、蛋白質の架橋形成を行う酵素であるトランスグルタミナーゼは、神経変性疾患において高発現することが知られており、培養マクロファージにおける炎症反応に関与することも示唆されている。培養アストロサイトを、細胞活性化剤であるリポポリサッカライド(LPS)で刺激し、トランスグルタミナーゼの発現変化を解析したところ、LPSの濃度依存的にトランスグルタミナーゼの発現増加が認められた。細胞活性化の指標として-酸化窒素(NO)産生を評価したところ、LPS刺激により、NO合成酵素であるiNOSの発現およびNO産生が認められた。さらに、培養アストロサイトにおいて、トランスグルタミナーゼの阻害剤をLPSと同時に添加しNO産生を評価したところ、LPSによるiNOS発現誘導およびNO産生が抑制された。したがって、グリア細胞の活性化にトランスグルタミナーゼが関与している可能性が示唆されるとともに、活性化したグリア細胞において発現増加したトランスグルタミナーゼが神経変性疾患の原因となっている可能性が考えられる。 神経変性疾患とグリア細胞の活性化に関連し、プリオン病に対して治療効果を持つことが指摘されているアンホテリシンBの培養ミクログリアに対する影響を検討したところ、アンホテリシンBはミクログリアにおいて神経栄養因子の発現を誘導しており、神経細胞に対して保護的に働く可能性が考えられる。
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