アテローム性動脈硬化が原因で発症する生活習慣病患者は世界で最も多く、その予防と対策は急務である。本研究では、アテローム性動脈硬化の危険因子の一つである血液中の低密度リポタンパク質(LDL)量を調節するLDL受容体の機能に着目した。食品由来の機能性分子であるトコトリエノールによるLDL受容体発現調節作用に関する研究を進め、その作用機構を明らかにすることで、動脈硬化予防の可能性を明らかにすることを目的とする。本年度は、肝臓由来の培養細胞を用いて、LDL受容体の発現に及ぼすα-トコトリエノールとα-トコフェロールの影響を検討した。α-トコトリエノールあるいはα-トコフェロールを処理したヒト肝臓由来培養細胞からtotal RNAを抽出し、遺伝子発現解析を行うと、α-トコフェロールを処理した細胞に対して、α-トコトリエノールを処理した細胞のLDL受容体のmRNA発現量が高くなることがわかった。そこで、α-トコトリエノールによるLDL受容体発現調節作用のメカニズムを明らかにするために、LDL受容体の発現に関連する遺伝子としてコレステロール代謝関連遺伝子についてmRNA発現量を調べた。その結果、コレステロール代謝関連遺伝子の発現にはほとんど影響は認められなかった。一方、LDL受容体の発現調節に関わる分子としても報告されているEgr-1とc/EBPβのmRNA発現が増加しており、これらの分子が関わって、LDL受容体の発現を調節している可能性が考えられた。次年度は、LDL受容体調節作用のメカニズムをさらに追及するとともに、α体以外のトコフェロールあるいはトコトリエノールがLDL受容体の発現に関与するかどうかを明らかにし、報告したい。
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