研究概要 |
昨年度までの研究で、アテローム性動脈硬化の危険因子の一つである血液中の低密度リポタンパク質(LDL)量を調節するLDL受容体mRNAの発現をα-トコトリエノール(T3)が亢進することを見出し、考えられるメカニズムの一端を示した。本年度は、LDL受容体発現への各種T3とトコフェロール(TOC)の作用の違いを明らかにし、細胞へのT3とTOCの取り込み量と活性の関係を見出すことを目的とした。肝癌由来培養細胞HepG2に対する各種T3とTOCの細胞生存率を調べ、HepG2を細胞毒性を示さない濃度のT3あるいはTOC存在下で培養し、リアルタイム定量RT-PCR法でLDL受容体mRNAの発現レベルを調べた。その結果、γ-T3とδ-T3の存在下で培養した細胞ではこれらを添加していない無処理の細胞と比べて、LDL受容体mRNAの発現がいずれも1.8倍に有意に増加した。蛍光物質1,1'-dioctadecyl-3,3,3',3'-tetramethylindocarbocyanine perchlorateで標識したLDL(DiI-LDL)を用いて細胞表面に結合したDiI-LDLの蛍光強度をフローサイトメトリー法で調べた。LDL受容体mRNAの発現が有意に増加したγ-T3を添加した細胞では添加していない無処理の細胞およびγ-TOCを添加した細胞と比べて、平均蛍光強度が1.6倍に増加し、γ-T3の添加によりLDLの細胞内への取り込みが亢進することが示唆された。各種T3あるいはTOCを処理した細胞のT3およびTOCの細胞内取り込み量を蛍光検出-高速液体クロマトグラフィー法で測定すると、LDL受容体発現増加作用が認められなかったβ-T3の細胞内取り込み量が最も高く、LDL受容体mRNA発現増加作用が認められたγ-T3およびδ-T3では比較的高値であった。
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