クロムは耐蝕性、耐摩耗性、強酸化性など優れた特徴を有し、機能材料として多くの産業に利用されている。産業利用されたクロムは、排水処理の過程で、クロムを含む大量の廃棄物を生じる。本研究では、クロム含有産業廃棄物からクロムを単離し、再利用するために、我々の研究グループが体内にクロムを集積する性質を明らかにした原生生物ミドリゾウリムシを用いて、ミドリゾウリムシ内のクロム吸着性物質を同定および精製する事を目的とした。以下、平成19年度の成果を記載する。(1)ミドリゾウリムシを用いた6価クロムのバイオアッセイ:ミドリゾウリムシへのクロム吸着量が最も多く、かつ、ミドリゾウリムシの生存個体数が多い条件を検討した。予備的な結果だが、処理したクロム量とミドリゾウリムシ1個体あたりのクロム吸着量はほぼ比例した。しかし、100μM以上のK_2Cr_2O_7を用いると、大きくミドリゾウリムシ数が減少した。(2)細胞内クロムの可視化とその局在の解析:金属イオン依存的に蛍光を消失する金属プローブ(カルセインブルー)を用いて、ミドリゾウリムシ内のクロム吸着部位を解析した。蛍光顕微鏡を用いた現在までの解析のところ、プローブの濃度など染色条件の検討が必要で、うまく染色できていない。本方法は、顕微鏡解析の他に、精製タンパク質の活性を検討する際にも有効と考えられるので、本年度も検討する。今回使用した金属プローブ以外のプローブも検討する予定。(3)クロム吸着性タンパク質のスクリーニング:平成19年度内には、十分に結果がでなかった。予定通り、今年度も引き続き解析を行う。(4)プロテオーム解析のためタンパク質抽出条件の検討:2回の2次元電気泳動の結果、中性付近から塩基性側にかけての特に高分子量領域でタンパク質スポットの再現性が困難であった。しかし、ゲルの中央付近にあたる上記領域以外では、比較的再現性よくタンパク質抽出ができていた。研究(3)でクロム吸着性タンパク質をスクリーニング後、再度検討する必要がある。
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