本研究課題は、小型鯨類における長期ストレスをストレス関連ホルモンから定量的に評価すると同時に、行動・鳴音の詳細な解析を行い、ストレスと相関の高い行動指標・鳴音指標を見いだすことを目的としている。 研究代表者は、課題の採択直後より、協力園館(主に神戸市立須磨水族園および名古屋港水族館)に研究打ち合わせも含め、のべ10回赴いた。飼育環境にある小型鯨類(主にハンドウイルカ)より、血液(血清)、唾液、涙などを採取し冷蔵あるいは凍結保存・移送し、実験室でELISA法にてコルチゾール濃度値を解析し、この測定のための採取・移送・実験手順を確立した。現在、血清中コルチゾール濃度値と、その他の生体試料中のそれとの相関関係の解析段階にある。また同時に、それぞれの園館で数回の24時間観察を行い、行動・鳴音を昼夜を問わず網羅的に記録し、その詳細なカタログ(エソグラム)を作成した。これによって、行動・鳴音指標の中から生理ストレスと相関の高いものを選定するための基礎データを整えることができた。現在、統計的な処理と検討を進めている。 上記の成果は、ほぼ研究計画で予定していた成果を満たしており、本研究課題の完遂のための重要な前段階を終えたと言える。
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