作物の物質生産向上には、作土からの栄養吸収を促進させる必要がある。イネにおいては、養分吸収を司る根系の発達程度とバイオマス量の間には、正の相関関係が認められている。イネバイオマス量の向上には、より根系を発達させ、養分吸収を促進させることが有効な方法の一つである。しかしながら、現在までに、作物の根系を制御している遺伝子は、殆ど明らかとなっていない。そこで、根系を制御している遺伝子の単離、同定を目指し、物質生産能が低下し、根系の発達が低下したrbml変異体を用いた解析を行った。ポジショナルクローニング法により、rbml変異の原因遺伝子が示唆された。この遺伝子のプロモーター領域約3kbと構造遺伝子領域約4kbを、野生型の染色体DNAを鋳型として、PCR法により、単離した。遺伝子機能相補性を検定するために、先のDNA断片を挿入したバナリーベクターを作製し、形質転換植物作製を行った。その相補性試験の結果、rbml変異体の表現型が回復することが確認された。当該遺伝子の機能を推定するために、既知の領域との相同性を検索したところ、当該遺伝子には、既知の配列が認められなかった。よって、当該遺伝子は、生物において、未だ機能が推定されていない新奇な機能をゆうする遺伝子であることが示唆された。当該遺伝子の特性を明らかにするために、時期、器官における蓄積量を定量解析したところ、生育期間を通して、根の伸長帯で多く蓄積していることが明らかとなった。このことより、当該遺伝子は、根の伸長を制御していることが示唆された。
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