本研究はメタゲノムライブラリーのハイスループットなスクリーニング系であるSIGEX法に用いる為の宿主を、大腸菌以外に拡張する事を目的としている。今年度は前年度に構築したE.coliとB.subtilis両方の宿主で使用可能なオペロントラップベクターを用い、温泉から抽出したメタゲノムを用いてメタゲノムライブラリーの構築に成功した。具体的な方法としては、始めにE.coliでライブラリーを構築し、当該ライブラリーからプラスミドを抽出し、これを用いてB.subtilisを形質転換させ、ライブラリー構築を構築した。この2つのメタゲノムライブラリーを用いてSIGEXを行い、得られる遺伝子に変化が生じるか解析を行っている。またSIGEX法を拡張する目的で、当該方法で得られる陽性クローンをレポーターシステムとして利用するPIGEX法の開発も行った。PIGEX法とはレポーターシステムを用いて、クローンライブラリーから目的の酵素活性を持つ陽性クローンのスクリーニングを行う方法である。今回ばSIGEX法を用いてクローン化した、安息香酸に反応するクローンをレポーターとして利用し、メタゲノムライブラリーから安息香酸アミドを安息香酸に変換する活性を持つ陽性クローンのスクリーニングをおこなった。その結果、96000個の独立したクローンからなるメタゲノムライブラリー中に、少なくとも104個の陽性クローンが存在している事を明らかにした。そして最終的にここから4つの新規な安息香酸アミダーゼ遺伝子のスクリーニングに成功し、これらが個々に特徴的な基質特異性を保持している事を明らかにすることに成功した。この成果は、PIGEX法が目的酵素のハイスループットなスクリーニング系として使用可能である事を示唆している。
|