本研究は海底下に生息する微生物の代謝活動を分子レベルおよび代謝活性を検出することによって、海底下に生息する微生物がどのようにして生命活動を維持するのに必要なエネルギーを生み出しているのか、生命関連物質はどのようにつくり出していくのかを明らかにしていくことを目的に行っている。具体的には安定同位体を用いて新鮮な堆積物を直接培養し、そこからDNAを抽出後、SIP(Stable Isotope Probing)解析を行うことによって、微生物を同定していくこと、また安定同位体のガスを検出することによって実際にその活性が検出されるのかを行う。さらにはその堆積物からDNAを直接抽出しそのDNAの塩基配列を解析することによって、その微生物がどのような代謝活動を行っているのかを遺伝子レベルで明らかにするために、海底由来堆積物から40kb以上の良質なDNA断片を抽出する系を構築することを目的としている。両者は組み合わせが可能なので分子レベルあるいは化学レベルで海底由来の堆積物に生息する微生物の代謝活動を明らかにすることが可能となる。 昨年度は「しんかい6500」の不具合及び安全確認潜航のため、南海トラフの調査潜航は中止となり当初予定していた安定同位体による培養実験計画を変更して新鮮ではないものの過去に採取された堆積物を利用し、培養を行う実験以外の実験系の構築を行った。その結果、海底由来の堆積物から良質な40kb以上のDNA抽出方法を確立した。また、窒素固定に関しては代謝遺伝子のクローニング、および海底由来堆積物からRNAを抽出して発現解析を行うことによって、堆積物中のどのような場所でそしてどのような環境下でこの窒素固定遺伝子が発現しているかが明らかとなった。
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