本研究は海底下に生息する微生物の代謝活動を分子レベルおよび代謝活性を検出することによって、海底下に生息する微生物がどのようにして生命活動を維持するのに必要なエネルギーを生み出しているのか、生命関連物質はどのようにつくり出していくのかを明らかにしていくことを目的に行っている。具体的には安定同位体を用いて新鮮な堆積物を直接培養し、そこからDNAを抽出後、SIP(Stable Isotope Probing)解析を行うことによって、微生物を同定していくこと、また安定同位体のガスを検出することによって実際にその活性が検出されるのかを行う。さらにはその堆積物からDNAを直接抽出しそのDNAの塩基配列を解析することによって、その微生物がどのような代謝活動を行っているのかを遺伝子レベルで明らかにするために、海底由来堆積物から40kb以上の良質なDNA断片を抽出する系を構築することを目的としている。両者は組み合わせが可能なので分子レベルあるいは化学レベルで海底由来の堆積物に生息する微生物の代謝活動を明らかにすることが可能となる。本年度は「しんかい6500」、南海トラフの調査潜航を4月に行い、安定同位体を添加した培地にて培養を試みた。現在もなお培養中ではある。これは薗の倍加時間が約9ヶ月という報告があり、少なくとも1年間は培養を行う必要があると考えているからである。また、本研究のもう1つの目的であった海底由来堆積物からの良質なDNAの抽出に関しては成功した。今後は先の安定同位体を添加して現在培養を行っているものから、構築したDNA抽出系を適用することによって、安定同位体を取り込んだ微生物のみのDNAを分離し、メタゲノム解析などの今後の解析に使用する。
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