本申請研究は、薬物を癌組織ミトコンドリア(Mt)へ送達するための新規送達システムとして、Mt標的型の多重型・多機能性ナノ構造体(多重型MEND)の開発を目的とする。本申請研究では、多重型MENDに活性酸素除去蛋白質SODを封入し、活性酸素の産生源Mtへ送達し、癌細胞を死滅させる今までにはないアプローチからの癌治療を目指す。本年度は、SODのMENDへのパッケージングを行い、SOD封入MENDを構築した。さらに、in vitroでのSOD封入MENDの活性酸素除去能の評価を行った。 <SODタンパク質のMENDへのパッケージング> SODをSTR-R8でナノ粒子化することを試みたが、SODはナノ粒子化されず脂質膜でパッケージングすることが困難であった。そのため、SODを効率的にMENDへ封入する戦略として、リポプレックスを利用した封入法を考案した。負電荷を有するSODと正電荷を有するリポソームを混合し、高密度にSODを濃縮したナノ粒子を調製した。その後に、ミトコンドリア融合能の高い脂質膜でコーティングした。 <MENDの活性酸素除去能の評価> SOD封入MENDの細胞内活性酸素除去能の評価を行った。癌細胞であるHeLa細胞にミトコンドリア選択的に活性酸素を産生させるロテンノンを添加し過剰に活性酸素が産生される細胞を構築した。その後、SOD封入MENDを添加し細胞内の活性酸素の量を測定した。その結果、SOD封入MENDは細胞内の活性酸素の40%を除去する事が確認された。 平成20年度は、細胞膜とMt膜を突破するために、MENDをエンドソーム融合能の高い脂質膜でコーティングした多重型MENDを構築し、ミトコンドリア移行効率を上昇させる。
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