本申請研究は、癌治療を目指したミトコンドリア標的型の多重型・多機能性ナノ構造体(多重型MEND)の開発を目的とする。平成20年度は、ミトコンドリア(Mt)融合陸リボソーム、MITO-PorterのMtへの薬物送達効率を上昇させる事を目的として、本キャリアを細胞膜融合性脂質でコーティングした多重型MENDを構築した。多重型の有用性を示すために、細胞内動態観察およびMtでの薬理効果を評価した。 <多重型MENDの構築と細胞内動態観察> 調製した多重型MENDの粒子径・表面電位を測定し、多重型構造体である事を確認した。次に、蛍光標識を施した多重型MENDを調製し、その細胞内動態を共焦点レーザースキャン顕微鏡によって観察した。その結果、多重型MENDはMt融合性脂質のみから構成される従来型MITO-Porterと比較して、Mt送達効率を劇的に向上させる様子が観察された。 <多重型MENDの薬理効果の評価> 多重型MENDの薬理効果を評価するためにキャリアにDNaseIタンパク質を封入し、培養癌細胞に添加後、Mt活性を評価した。DNaseIがMt内部に送達されるとmtDNAが切断され、Mt活性が低下する(Mt活性の低下は癌細胞の死滅を誘起する)。評価の結果、多重型MENDは従来型MITO-Porterと比較して30倍以上の高い薬理効果を示す事が確認された。 本申請研究では、多重型構造体の構築に成功しMt送達効率およびMtでの薬理効果を向上させる事に成功した。これらの結果より、多重型MENDはMt標的型ナノデバイスとして有用である事が示唆された。今後は、invivoデリバリーシステムへと発展させ、癌などの疾患治療へ応用するべく研究を進める予定である。
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