研究概要 |
本研究の目的は、幼若期における生物時計機構の発達を、機能的及び形態的に分析・比較検討することである。生物時計機構の指標として、哺乳類のリズム中枢である視床下部視交叉上核における時計遺伝子Bmall発現リズムを生物発光レポーターを導入したトランスジェニックマウスを用いてリアルタイムに連続測定し、遺伝子発現の発達段階による差を解析した。 これまでの実験結果より、幼弱期マウス培養視交叉上核におけるBma11現リズムは、非光刺激である培地交換により位相依存的に位相変位するのに対し、成獣マウス視交叉上核においては大きな位相反応はみられないことが示された。この結果は、成熟期においては主要なリズム調節因子は光刺激であるのに対し、幼弱期には母親からの非光シグナルの影響が大きいという生物時計の調節機構の違いを反映しているものと考えられる。また、測定した全ての成獣マウス視交叉上核がはっきりとした概日振動を示したのに対し、約半数の幼弱期マウスは培養初期において二峰性リズムを示した。このことから、幼弱期においては視交叉上核内振動体間の連絡が未熟である可能性が示唆された。 以上の結果はすでに国際学会において発表し(2nd World Congress of Chronobiology,2007,Tokyo)、また英文学術雑誌に受理されている(Nishide, et. al., Eur. J. Neurosci,2008,in press)。平成19年度の計画であった生物時計機構の機能的発達の解析という目的はすでに達成されており、20年度においては、残りの課題である形態的な分析を行うとともに、機能的な解析をさらに進める予定である。
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