研究概要 |
本研究の目的は、申請者らが最近確立した自己抗原のヒト化という新しい技術(Nishie W, et. al. Nature Medicine 2007; 13: 378-383)を応用し、ヒトの水疱性類天疱瘡患者の病態に極めて類似した疾患動物モデルを作製することである。これまで作製された水疱性類天疱瘡モデル動物の多くは、新生児マウスへ病原性のある自己抗体を投与することによって作製されているが、今回作成するモデルは、自己免疫患発症の根本的な発症要因と考えられる"免疫寛容の破断"により発症するモデルである。水疱性類天疱瘡の主要な自己抗原領域(抗原エピトープ)は、17型コラーゲンの細胞外領域、非コラーゲン領域であるNC16Aドメインであると予想されている。従って本研究では、まずこのNC16A領域のリコンビナントタンパクを作成した。作成したリコンビナントタンパクは、水疱性類天疱瘡患者IgGと反応することを確認し、次に17型コラーゲンヒト化マウスへTiterMax(R)を用い免疫した。 その結果、マウス自身のタンパクであるヒト17コラーゲンのNC16A領域に対する自己抗体産生を誘発することに成功し免疫寛容を破綻することが出来た。これは水疱性類天疱瘡患者自身で生じていることと極めて類似しており、非常に有用な疾患モデルとなることが期待される。今後、自己抗体が生じたマウスを詳細に解析し、水疱性類天疱瘡の発症メカニズム解明を進めていく予定である。
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